コラム

巷にあふれる「水素水」のホントのところ!第一章

2022/12/16

水素水って、どういう水のこと?

「水素水」は誰でも耳にしたことがあるほど一般的に知れ渡っていますが、“水素水が何たるか”については漠然としたイメージや、「何となくあやしいのでは?」といったイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。

このコラムでは、3回にわたって水素水についてお伝えしてきます。

 

国立健康・栄養研究所では、「水素水とは、水素分子(水素ガス)の濃度を高めた水である」*1 としています。

 

『ここまでわかった水素水 最新Q&A』の著者であり、水素水研究の第一人者ともいわれる太田成男氏は同著の中で「効果・効能を発揮できる水素の量を含んでいる水」を水素水として定義したいとしつつ、「水素水は食品です。食品には基本的に効果・効能はないということになっています。(中略)効果・効能を根拠に公的に定義することは可能でしょうか?」とそのジレンマを指摘しています。

そもそも水素とは?

そもそも国立健康・栄養研究所が水素水の説明として用いている「水素(分子)」とは何でしょうか?

 

水素は分子の中で最小サイズかつ最も軽い気体で、常温・常圧では無色、無味・無臭であり、水にも油にも溶けるという性質を持っています。また、元素記号は「H」で一般に原子が2つ結びついた水素分子(H2)を「水素」としています。

 

また、国立健康・栄養研究所は「水素分子 (水素ガス) は腸内細菌によって体内でも産生されており、その産生量は食物繊維などの摂取によって高まるとの報告がある。」*1 としており、人間の体内にすでに存在しているものであるとしています。

水素水の区別

ここで冒頭の「水素水ってどういう水のこと?」という疑問に立ち戻ると、水の調整方法によって大きく2つに分別されているようです。

水素水と電解水素水の区別図解

一つは、最初に出てきた水素分子の濃度を高めた「水素分子水」で、これには加圧下で水素ガスを水に充填する方法と、金属マグネシウムなどと水の化学反応で水素分子を発生させて水素分子の濃度を高める方法があります。

もう一つは「電解水素水」とされるいわゆるアルカリイオン水です。これは水を電気分解して陰極側に発生した水素分子を用いる方法で作ることができます。

国立健康・栄養研究所は、「水の電気分解により陰極側に発生したアルカリ性電解水 (アルカリイオン水) が、還元水素水、電解水素水と呼称される場合があるが、水素分子以外の因子の関与が否定できない」*1 としており、研究者をはじめとして多数の機関でも「水素分子が混ざった水素水」と「アルカリ性の電解水素水」は別ものとする見解が多いようです。

また、水素水としてペットボトルやアルミパウチタイプのものなど手軽なものも市販されていますが、「実際に飲用する際に、どのくらいの濃度になっているのかは、分かりません」(国民生活センター報告:2017年1月)*2 と指摘されるように、水素水の状態の変わりやすさゆえのあいまいさや、上記のような分類上の定義のややこしさ等が消費者にとっては不安や疑念を感じる要素になっているといえるでしょう。

このシリーズでは、生成方法から構成も異なる「水素分子水(一般に水素水と呼ぶ)」と「電解水素水(アルカリイオン水に代表される)」の優劣を定めるものではなく、その性質や特徴について掘り下げて認識を深めることを目的としたいと考えています。

「水素水」が人体に及ぼす影響についてのコラムは次回「水素水が“身体に良い”とされるのはなぜ?」に続きます。どうぞお楽しみに!

・参考文献『ここまでわかった水素水 最新Q&A』太田成男著

・*1 国立健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性情報」https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/index.php?btn_id=1&q=%BF%E5%C1%C7%BF%E5

*2 国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20161215_2.html